2024年は、NHKの大河ドラマ『光る君へ』で何年かに一度の『源氏物語』イヤーとなっているようです。女心の分からない私にとっては、何とも言えない物語ですが、平安時代から今に至るまでいろいろな人たちによって翻訳もされています。代表的な作家の翻訳だけでも、与謝野晶子訳、谷崎潤一郎訳、円地文子訳、田辺聖子訳、橋本治訳、瀬戸内寂聴訳、林望訳、角田光代訳などがあります。名前だけでも錚々たる顔触れです。如何に『源氏物語』が多くの作家をインスパイアし、翻訳してみたいと思わせる物語であるという証左でしょうか。
この本の著者は、京都「紫香の集い」という『源氏物語』の勉強会を主宰する梶裕子さんです。梶さんは南禅寺門前で「うつわや あ花音」というお店を34年に渡ってされていますが、ご主人の経営する京都・新門前にある「梶古美術」の2階を使って、この勉強会を開いています。(1st version:2014年10月〜2020年12月、現在は2nd version:2024年4月〜)この勉強会は、『源氏物語』の研究家である福嶋昭治先生(園田学園女子大学名誉教授)による解説が洒脱で面白いと評判ですが、残念ながら現在では参加希望者多数で新規参加は出来ないそうです。その勉強会が始まる前に、当日のテーマに合わせて作られた聚洸さんのお菓子とお抹茶が供されるのですが、そのお菓子が美しくて美味しいと評判に。そこで版元である光村推古書院様にご相談して、2020年5月、『御菓子司 聚洸の源氏物語』として書籍化することになりました。
帯にある「うつわと和菓子と源氏物語 1冊で3倍楽しめる! こんな本、ありそうでなかった!」という文章はまさにその通り、というお言葉も何人の方から頂戴しました。梶さんの眼で選ばれた作家ものの器や魯山人、古伊万里や天啓赤絵などの古器に、聚洸のご主人・高家裕典さんが作られる宝石のように美しいお菓子がぴたりと収まる写真はとても美しいです。写真は岡森大輔さん。器はもちろん、お菓子の素材の質感を上手に再現してくださっています。『源氏物語』を読みながらこの本の写真を見たり、聚洸さんのお菓子を頂きながら『源氏物語』を読むなど、いろいろな楽しみ方が出来る一冊です。