無盡藏

既刊

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京都の町家に学ぶ たしかな暮らし

松井 薫|A5判並製 232頁|2200円+税|学芸出版社|2023(令和5)年11月15日初版

松井 薫
A5判並製 232頁 2200円+税
学芸出版社
2023(令和5)年11月15日初版

◉目次
はじめに

今、なぜ町家なのか

第一章 町家はどのようにして誕生したのか
〜成り立ちと変遷〜

町家のルーツは平安時代?!/江戸時代と地続きの家/町家は絶滅危惧種?

第二章「木・土・紙・石」から作られた住まい
〜先人の叡智と技術が結集した建築空間〜

町家の構造/町家のパターンと空間/町家に使われている素材

第三章 その魅力は「中間領域」にあり
〜日々の暮らしに与える影響〜

町家暮らしにあるもの/町家の中に流れている時間/町家に備わる中間領域

第四章 未来につなぐために今できること
〜町家を生かす再生方法〜

町家再生の考え方/町家と構造計算/変化してきた設備と現代生活への対応/
自然素材の新しい使い方

◇対談 町家とゴリラ
山極壽一(総合地球環境学研究所所長)×松井 薫

第五章 町家的スローライフを考える
〜たしかな暮らしを続けるために〜

腹八分目で生きるということ/利便性と環境の間で 〜人間は何を選択するのか〜/
人間も自然の一部である

あとがき

◉詳細
「京町家再生研究会」「京町家作事組」「京町家友の会」「京町家情報センター」という4つの組織からなる「京町家ネット」という京町家について考え、活動する組織があります。元々は京町家とはどういうものかということを考え、どのようにしたら保存・承継できるのかを考える建築士の方たちによって「京町家再生研究会」が1992年(平成4)に発足しました。勉強会を重ねるうちに、実際に保存・修復する必要に迫られ建築士や左官屋さん、大工さんらを交えて「京町家作事組」が出来ました。ハード面の研究が進むと今度は建物だけではなくて、そこに住む人たちの暮らしや歳時などの保存・継承をする必要性が生まれ、1999年(平成11年)に「京町家友の会」が誕生します。そして2002年(平成14年)には、京町家を借りたい方と貸したい方を結ぶ「京町家情報センター」が出来たのも、必然だったのかもしれません。

私が京都に住むようになったのも、「京町家友の会」に入会したことがきっかけでした。そこでこの本の著者である一級建築士の松井薫さんと出会うことになりましたが、当時、松井さんは「京町家情報センター」の責任者をされていました。爾来、20年ほどのおつきあいになりますが、折に触れてその京町家に対する専門知識だけでなく、政治や経済まで幅広く見渡しながら問題提起されておられる姿に感心することも多々ありました。
また松井さんは、ご自身で「自然体で行こう」というフリーペーパーを年4回発行されています。自腹で印刷費や郵送費を賄っておられますが、毎回濃い内容に頷くファンも多く、この本の編集者でもある山形恭子さんから、ある日、「自然体で行こう」を纏めて本に出来ないかと相談を受けました。

冬の凍える寒さの中にも感じる、縁側の陽だまりの暖かさ。
春になり、庭の木々の吹き出すような新芽を目にするうれしさ。
真夏、外から帰ってきた時の、ほの暗い家の中のほっと涼しい空気。
やっと暑さがおさまって冬へと向かう季節の、逆光に映える紅葉の美しさ。
それらが何気ない日常に色合いを添え、
また巡り来た季節に過去の自分を重ねる……。

町家の生活の中で感じられるさまざまな事柄が、町家という建物とどう関係しているのか、
それを解き明かしていきたい。

「はじめに」に書かれた松井さんの文が、この本を総てを物語っています。言葉の隅々まで町家への愛に溢れていますが、一級建築士としての冷静な眼は、地球というマクロの存在から畳の隅の塵というミクロな存在まで見つめています。ゴリラ研究家の山極壽一さんとの対談はたいへん興味深く、田口葉子さんによる町家の美しい写真の数々もこの本に彩りを添えています。
京町家の成り立ちや歴史、その構造から現代に至る活用法まで、この一冊で町家の全てがわかると言っても過言ではありません。