Yu Hirai(ひらいゆう)
B5判変形 コデックス装 88頁 ¥3600+税
無盡藏パブリッシング
2025年5月29日初版
◉詳細
「夕暮れの残光が消えかかる頃、家の中には明かりが灯り始める。この二つの内と外の光が交わる暫時を『フタアカリ』と呼ぶ。部屋の中に赤ランプを照らし、外の青い空気とあそばせる。赤は私の内的世界、夢、生命の色、記憶。青は外、世の中、未知。フタアカリの時刻、赤と青の世界の境界が溶けていく。その時、私は自由を取り戻す……幼い頃のような。」と著者のひらいゆうさんは言います。
また「フタアカリ」をフランス語では、「Entre Chien et Loup(犬と狼の間)」と言いますが、これは「犬と狼、味方と敵、知っている者と知らない者を区別するのが難しくなるほどの光の状態の時間帯」と表現するそうです。
ひらいさんは20歳で渡欧し、ベルギーの視覚芸術専門学校で絵画を学び、その後バルセロナ・ベルリンに移住し、写真制作を始めたそうです。ひらいさんの作品が持つ、無国籍な雰囲気や色彩感覚はこのような背景から滲み出てきたものでしょうか。鮮やかな写真作品と対照的に、ドローイングや油絵はモノトーンの作品も多く、またもう一つの魅力的な作品の数々を発表しています。
私が初めてひらいさんの作品を観たのは、2016年京都のアートスペース虹でのひらいさんの個展でしたが、その作品の赤と青の色彩の間に垣間見える孤独な魂の存在が強く印象に残りました。以来、何度か展覧会を拝見しましたが、写真だけではなくドローイングやタブローもたいへん魅力的な作家です。
嘗て私が映画館に入り浸っていた20代の頃に、『赤い影』という映画を見ました。主人公役にドナルド・サザーランド、監督はニコラス・ローグ。1973年のイギリスとイタリアの合作です。子供を事故で亡くした主人公が、ヴェネツィアの街でその俤を追い求めて彷徨う話です。街の至るところで、赤い影が主人公の視界を掠めるのですが、亡き娘のレインコートの赤が強く印象に遺りました。今回の出版とは直接関係のない話ですが、ひらいさんの作品の初めて見た時にこの『赤い影』のこと想いだしたのです。表現のコンセプトは全く違いますが、斯様に赤という色は人の心を掻き立てるものなのでしょうか。




